史料 櫛形炭鉱資料

史料目次


史料について

テキスト化にあたって

[本文]

櫛形炭鉱資料

高萩炭礦株式会社

1.炭鉱の位置、交通並に輸送関係

当鉱は茨城県多賀郡十王町大字友部に位置している。南は日立市に北は高萩市に隣接し、常磐炭田の最南端に位している。
 常磐線川尻駅(上野駅より160km)まで900m、国道(6号線)まで約3km、当鉱用地に接して県道が通過しており、交通は極めて便利である。
 輸送は貨車とトラック併用で行われ、いづれもポケットから直接積込み発送している。貨車は川尻駅から当鉱をつなぐ専用側線により、トラックは運送業者により各地に輸送されている。

2.生産数量、労務者、能率、品位

年 度 生産数量
櫛形本坑
実働労務者数 能 率 品 位
昭和14年 2,641 159 4.2
15 26,520 213 10.4
16 14,931 341 3.6
17 40,412 365 9.2
18 55,486 447 10.3
19 48,270 586 6.9
20 28,566 477 5.0
21 51,260 644 6.6
22 51,745 7.27 5.9
23 67,090 659 8.4
24 73,680 616 10.0
25 64,899 554 9.7
26 66,239 495 11.1
27 68,346 506 11.2
28 79,581 504 13.2
29 77,828 493 13.2
30 87,762 592 12.4 5,100
31 76,070 605 10.5 5,090
32 70,618 604 9.7 5,090
33 76,830 602 10.6 5,090
34 101,450 566 14.9 5,090
35 115,220 560 17.1 5,100
36 120,450 552 18.2 5,090
37 111,350 551 16.8 5,090
38 74,550 509 12.2 5,100
39 101,250 528 16.0 5,080
40 139,430 592 19.6 5,100
41 139,150 570 20.4 5,110
42 184,724 587 26.2 4,970
43 236,377 533 36.9 4,830
44 257,455 500 42.9 4,880
45 248,627 513 40.4 4,770
46 380,771 517 61.4 4,720
47 11月まで 277,381 521 66.6 4,540
合計 3,616,959

3.閉山交付金申請に至つた経緯

4.鉱区及び開坑の沿革

イ 採掘権の設定から現権者に至るまでの鉱業権者の沿革

茨城県採掘権登録第94号

大正9年4月7日 採掘権設定登録 面積706,525坪 取得者石井留蔵
昭和2年6月15日 採掘権譲渡による取得を登録 面積691,832坪(修正表示変更登録) 取得者吉本喜太郎
昭和10年9月23日 採掘権譲渡による取得を登録 取得権者岡上□蔵
昭和10年11月4日 出資契約書に基き採掘権譲渡による取得を登録 取得者株式会社櫛形鉱業所
昭和12年8月20日 譲渡契約書に因り採掘権取得を登録 取得者櫛形炭炭鉱株式会社
昭和17年8月5日 会社合併に因り採掘権取得を登録 合併会社東邦炭礦株式会社
昭和20年9月26日 譲渡契約に因り採掘権取得を登録
取得者 高萩炭礦株式会社
昭和41年6月13日 通商産業大臣の命令により鉱区面積記載変更 面積22,870アール
 昭和44年10月21日 鉱区面積記載変更 面積22,295アール
昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更 東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

茨城県採掘権登録第111号

昭和4年12月9日 採掘権設定登録 面積184,580坪 取得者宇佐美泰寿
昭和15年2月20日 譲渡契約に因り採掘権取得を登録 取得者相沢作八
昭和16年2月14日 譲渡契約に因り採掘権取得を登録 取得者寺沢慶作
 昭和30年12月14日 譲渡契約に因り採掘権取得を登録 取得者高萩炭礦株式会社
昭和39年11月5日 採掘権変更登録に因り鉱区面積記載変更 面積5,500アール
昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更
東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

茨城県採掘権登録第234号

昭和29年2月1日 採掘権設定登録 面積30,717アール 取得者高萩炭礦株式会社
 昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更 東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

茨城県採掘権登録第253号

 昭和32年1月22日 茨城県採掘権登録第116号より鉱区分割登録 面積9,545アール
尚第116号は採掘権設定昭和8年10月14日 取得者岡上□蔵
其の後同第94号と同様の取得者を経て昭和20年10月15日高萩炭礦株式会社が取得する。
昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更
東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

茨城県採掘権登録第393号

昭和27年6月1日 採掘権設定登録 面積5,618アール 取得者高萩炭礦株式会社
 昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更
東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

茨城県採掘権登録第379号

昭和42年6月28日 採掘権設定登録 面積2,48アール 取得者高萩炭礦株式会社
 昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更
東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

茨城県採掘権登録第235号

昭和29年6月1日 採掘権設定登録 面積10,992アール 取得者高萩炭礦株式会社
 昭和46年12月7日 同会社の住所を住所表示変更
東京都中央区新川1丁目18番11号と変更附記登録

 計 7鉱区  面積86,715アール

ロ 租鉱権及び重複鉱区

  なし

ハ 企業体の沿革

昭和12年6月 株式会社櫛形鉱業所により本坑(旧)を開さく (昭和12年8月櫛形炭鉱株式会社が買収)
昭和14年5月 櫛形炭礦株式会社が本坑(旧)本卸、連卸を開坑 (昭和17年8月櫛形炭鉱株式会社は東邦炭礦株式会社に合併)
昭和20年6月 東邦炭礦株式会社より当社が買収 (旧第一斜坑の殘炭炭を採掘)
昭和21年3月 南斜坑を開さく
 昭和35年11月 櫛形本坑(現新斜坑)を開さく
昭和40年10月 運搬、通気、排気などの諸兄等を旧本坑より現斜坑(新斜坑)に切換える。
昭和42年6月 高萩炭鉱閉山により同鉱の従業員を受入充□、同時に第三斜坑の開発に着手
昭和44年3月 旧本坑区域を閉鎖、同時に第二斜坑を中心に操業区域を集約
昭和46年2月 開発した第三斜坑区域に主生産切羽を転換、現在に至る

5.隣接鉱区(略図で示す)

  1. [註]本図は編者において原図をもとに作図した。鉱区の境界線(直線)の外に読取りにくいが常磐線、海岸線、河川(小石川・花貫川)の線(曲線)が描かれている。

6.地形、地質、炭層

イ 地形

当地域の地形はなだらかに起伏せる山地、台地及び海岸近くの平野よりなつており、河川は小石川が流れており、主要道路は国道6号線、鉄道は常磐線が通つて居る。
 農地は小石川流域と海岸の平野部は水田、台地は畑地山林よりなつておる。
部落は農家が点在しておる。
 尚鉱区北部にKDDの宇宙衛星通信中継基地、高萩工業高校、石滝住宅団地等がある。採掘の制限は常磐線下60°以内を採掘率30%に制限して居る。

ロ 地質

この附近の地質は、

の層序よりなつている。
 平地は大半沖積層或は砂丘に覆われており、台地は河段堆積層及びローム層に覆われている。
 山腹部には多賀統の砂岩層、砂質頁岩が露出している。鉱区西部の山地は石城砂岩層、夾炭層基盤岩が露出しており石城砂岩層及び夾炭層の炭層の露頭が見られる。

ハ 炭層

炭層は上より一番層、二番層、三番層、四番層(上石、中石、下石)及び千代田上層、千代田本層(上石、中石、下石)の十層よりなつている。当鉱における主たる稼行炭層は千代田本層の上石、中石である。本層の平均走向はNE20°、傾斜は東に低く、15°〜12°であるが基磐に近い千代田本層では基磐の□丘に影響により走向が蛇行し傾斜も変化が多い。

7.炭層の状況(計算対象炭層のみ)

炭層名 層間隔 既未稼
行別
現在の
坑口名
隣接の稼
行炭鉱名
上下盤の状況
上盤 下盤
その他
一番層 20m 櫛形本坑 旧川尻炭鉱
〃十王炭鉱
〃友部炭鉱
〃向洋炭鉱
〃秋山炭鉱
砂岩 頁岩 非粘着
二番層 50m  〃 砂質頁岩 砂質頁岩  〃
三番層 79m  〃 頁岩 頁岩  〃
四番層上石 19m  〃 砂岩 頁岩  〃
四番層中石 20m  〃 砂岩 頁岩  〃
四番層下石 49m  〃 頁岩 砂質頁岩  〃
千代田上層 18m  〃 砂岩 頁岩  〃
千代田
本層上石
 
-1m
 〃 砂質頁岩 頁岩  〃
千代田
本層中石
 
-1m
 〃 頁岩 炭質頁岩  〃
千代田
本層下石
   〃 炭質頁岩 頁岩  〃

8.炭質

イ 炭量別工業分析

炭層別    発熱量  水 分 灰 分 揮発分 固定炭素 硫 黄
一番層 3,670 15.9 33.0 27.4 23.4 0.2
二番層 3,520 16.9 33.5 26.8 22.8
三番層 3,320 19.0 34.4 25.3 21.3
四番層上石  3,690 16.2 25.7 30.7 27.4
〃 中石 4,180 13.1 31.8 29.6 25.5
〃 下石 3,510 12.1 41.8 25.6 20.5
上 層 5,000 17.3 11.3 34.8 36.6
本層上石 5,100 19.9 8.3 34.3 37.5
〃 中石 5,250 20.5 6.0 35.2 38.3
〃 下石 5,000 16.5 11.1 34.6 37.8

ロ 銘柄別、生産数量及び生産比率、保証品位、用途、主なる販売先

(自46年12月 至47年11月 の1年間)

銘柄別 生産数量 生産比率 発熱量 灰 分 用 途 主なる販売先
櫛形特塊 1,168 0.3 5,300cal  8.5 暖厨房 高萩商事(株)
外特約店
〃特洗中塊 58,713 13.9 5,200 11.7  〃
〃特洗小塊 14.453 3.4 5,200 11.7  〃
〃特洗粉 183,485 43.4 5,000 12.4 ボイラー 常磐共同火力(株)
三菱製紙(株)
高崎製紙(株)
〃細粉 1,108 0.3 5,000 13.5  〃 常磐共同火力(株)
〃洗粉 134,072 31.7 3,800 31.4  〃
〃並中塊 29,386 7.0 3,800 31.4 暖厨房  〃
特約店
合計 422,385 100 (平均)
4,620
(平均)
17.6

ハ 塊炭率

 24.6%

ニ 精炭歩留り

 79.5%

ホ 選炭方式

 空気動ジクバウム式並にドルボーイ式重液による選炭

9.開 坑

坑 名 旧現有別 開坑年月日 閉鎖年月日 稼行炭層 摘 要
櫛形本坑本卸 現有 昭和35.12 千代田本層上石、中石
〃 〃 連卸 昭和35.12  〃
〃 〃 排気坑  昭和38.5  〃

10.現稼行

坑口名  櫛形本坑
 坑口から最遠採炭場までの距離  3,300m
 炭層の走向傾斜  平均NE20° 東低15°
 坑口標高  SL+40.5m
 層別既採□最高深度  千代田本層上石 SL—637m
                 中石 SL—637m
 現在の稼行深度  水平上部坑区域 SL—286m
          三斜坑 〃   SL—487m
          二斜坑 〃   SL—531m

11.採炭

採炭方式  千代田本層、中石、主に長壁式炭層払、スライシング採炭
       〃     下段一部柱房式採炭
       〃     上石、スライシング採炭上段
 片盤間隔及切羽長(47.11月末現在)
       水平上部石坑  62m  35m
       三斜坑    135m  134m
 炭載方式  ピック、発破併用
 支柱    鉄柱カッペ使用 二段格子□立柱
 切羽能率  10トン/人
 上下盤の状況  良

12.坑内外運搬(運搬系統図添付)

切羽・ゲート坑・立入(DOO)→片盤(BO)→積込ポケット→炭車積(これより列車運搬)→斜坑(巻揚機)→水平坑(ジーゼルロコ)→斜坑(巻揚機)→坑口ホッパー→選炭機までベルト運搬
 主要運搬設備は
本坑本卸 630kw複胴巻揚機、二斜坑本卸 600kw単胴巻揚機、三斜坑本卸 300kw単胴巻揚機
 連絡運搬坑 4Tデイーゼルロコ3台である。

13.坑内ガス

通気方式、中央式、機械通気
 主要扇風機    225KW×3,500m3/min×230m/m
 通 気 量    3,548m3/min(47.11.13現在)
 ガス発生の有無  発生なし
 指定種別     乙種

14.坑内湧水

特定区域の湧水はなく、採掘跡全盤からの湧水を見て居る。
 排水量  平時、最大共に29m3/min
 主要排水設備は
 坑底ポンプ     350kw×425m×3.3m3/min×3台
 二斜坑七片ポンプ  300kw×320m×3.3m3/min×2台
 三斜坑三片ポンプ  115kw×126m×1.2m3/min×1台
          (22kw+15kw)×120m×0.35m3/min×1台
 排水指定  有(炭層上部の含水層及向洋炭鉱古洞水を対象として全坑

15.原単位表

年 度単位43年44年45年46年47年
坑 木 m3 0.021 0.016 0.019 0.019 0.017
火 薬 kg 0.386 0.337 0.380 0.384 0.273
電 力 kwh 79.5 64.0 72.8 54.4 44.1
鋼 枠 kg 3.92 3.20 2.32 1.64 0.91

注 年度は当社年度(12月から翌年11月まで)を採用した。 但し、47年度は12月から10月までとする。

運搬系統図

[略]