史料 櫛形炭鉱概況
目次
- 櫛形炭礦(株)の概要及び沿革
- 櫛形炭礦の概況
- 閉山の時期及びスケジュール
- 閉山の理由
史料について
- ◦作成時期は、櫛形炭鉱の閉山が決定してまもなくのころ(昭和47年12月ごろ)である。
- ◦作成者は、高萩炭礦株式会社である。
- ◦B5の洋紙に謄写版印刷されている。
- ◦本史料に表題は付されていないので、編者において仮に付けておいた。
- ◦[ ]内は編者の註。
1 高萩炭礦(株)の概要及び沿革
(1)概要
企業名 |
高萩炭礦株式会社 |
代表取締役 |
菊池仁 |
資本金 |
5,100万円 |
設立年月日 |
昭和15年5月7日 |
本社所在地 |
東京都千代田区丸の内3丁目三の1 |
炭鉱名 |
櫛形炭鉱 |
鉱業所長 |
夏原喜三郎 |
鉱業所々在地 |
多賀郡十王町大字友部2565 [現日立市友部町] |
(2)沿革
ア |
昭和12年6月 |
株式会社櫛形鉱業所より本坑(旧)開さく |
イ |
〃17年8月 |
東邦炭鉱(株)に合併、同櫛形鉱業所となる |
ウ |
〃20年5月 |
高萩炭礦(株)が譲渡を受ける |
エ |
〃35年11月 |
櫛形本坑の開さくに着手する |
オ |
〃40年10月 |
運搬通気排水等の諸手続を旧本坑より現本坑(新斜坑)に切り替える |
カ |
〃42年6月 |
高萩炭鉱閉山に伴い同鉱労務者受入 予備切羽として第三斜坑区域の開発に着手する |
キ |
〃44年3月 |
旧本坑区域を閉鎖、第二斜坑を中心に操業区域を集約する |
ク |
〃46年2月 |
第三斜坑区域に主生産切羽を転換 |
ケ |
〃48年1月 |
櫛形炭鉱閉山[1月31日] |
2 櫛形炭礦の概況
(1)石炭坑名
(2)鉱区
鉱区 |
茨城県採掘権登録第94号外6鉱区 |
面積 |
86,715アール |
(3)生産構造
項目 |
\年度 |
44 |
45 |
46 |
47 |
生産量 |
一般炭(トン) |
257,455 |
248,627 |
380,771 |
395,400 |
人員 |
常用労務者 |
518 |
521 |
581 |
524 |
能率 |
トン/人/月 |
46.3 |
43.3 |
56.8 |
62.7 |
(4)従業員数(47年11月末現在)
職員 |
66人(2人) |
鉱員 |
419人(34人) |
常用臨時 |
135人(4人) |
計 |
620人(40人) |
(注)( )内は長欠者
(5)従業員家族数 (47年11月末現在)
職種/区分 |
世帯数 |
家族数 |
扶養家族数 |
職員 |
66 |
204 |
145 |
鉱員 |
527 |
2,105 |
742 |
計 |
593 |
2,309 |
887 |
(6)系列会社
会社名 |
所在地 |
設立 年月 |
業種 |
資本金* |
従業 員数 |
(株)高萩製作所 |
高萩市大和町 |
26.4 |
機械製作及び販売 |
12 |
69 |
日興建設(株) |
〃本町 |
24.9 |
土木建築 |
30 |
117 |
高萩開発(株) |
〃高戸 |
38.3 |
観光 |
100 |
63 |
(株)大心苑 |
〃高萩 |
41.4 |
スポーツランド、住宅 |
10 |
82 |
高萩商事(株) |
〃大和町 |
42.8 |
燃料販売 |
10 |
86 |
医療法人高萩寛仁会 |
〃秋山 |
41.2 |
病院 |
10 |
28 |
(株)茨城炭礦会 |
〃春日町 |
28.12 |
火薬、鉱山用具販売 |
5 |
13 |
十王砕石鉱業(株) |
十王町高原 |
39.7 |
採石 |
20 |
50 |
(株)高萩エンジニアリング |
十王町友部 |
45.7 |
地質調査 |
1 |
7 |
* 資本金の単位:百万円
3 閉山の時期及びスケジュール
昭和47年12月18日 |
石炭合理化事業団に石炭鉱山整理促進交付金の交付申請 |
〃48年1月20日 |
採炭作業終了 |
〃 1月31日 |
第1次解雇365人 |
〃 2月15日 |
撤収作業完了 |
〃 2月27日 |
第2次解雇約220人 |
〃 2月28日 |
坑口閉鎖 |
〃 3月10日 |
鉱業権の消滅登録 |
5 閉山の理由
[この項目は、本紹介史料とほぼ同様な内容をもつ史料が別にあって、そこにのみ記されているので、本史料に続けて紹介しておく]
- 従業員の老齢化による生産性の向上に限界がある。ことに直接員の雇用充足が今後益々困難となる。
- 相次ぐ炭礦の閉山による工場向け、暖房用炭共極度に需要の減退を来たし、増産による販路の拡大が難しく、当社の主力商品である塊炭の販売が先行き見通しが立たない。
- 現在の採掘ケ所は地上か山間部で鉱害の発生は極めて少なかったが、今後は平野部に入るので、公共施設、農工地に公害発生の虞がある。
- 賃金物価等の昂騰によるコストアップは逐年著しく上昇を及ぼし、又採掘ケ所の深部移行に伴ひ上記諸般の状況より増産による吸収は難しく、さらにコストアップを伴ひ経済的採掘に限界がある。
- 今後深部区域の於ける採掘ケ所の進展に伴い切羽の深度は700m以上に達し、必然的に盤圧の増加、切羽温度の上昇、異常出水の発生等も予測され、炭礦の操業に当って最も重要な保安の確保について危惧がある