横穴式地下防空壕の工事史 目次
- 著者 主濱 實
- 発行所 (財)小平記念会
- 発行年 1994年6月
- 判型等 A4 本文86頁 ほかに写真、史料、図面があわせて66頁
日立製作所の「一介の土木屋」であるとする主濱實さんによる本書は、日立工場海岸工場に対する昭和20年6月10日の米軍の空襲を地下防空壕の被災に焦点をあて、みずからの体験をもとにしながら多くの史料を駆使してまとめられたものである。初公開の史料もある貴重な記録である。
海岸工場では防空壕から多くの死者をだした。主濱さんは「序」においてこの書をまとめた目的を次のように記す。「工事に関係した一人として…防空壕の設計・施工管理を担当され壕内で殉職された上司と、請負工事で作業中殉難された作業員の霊を慰めるため、これらの人達の工事された事績を書き残しておくことが私に負わされた責務」だと。
著者の主濱さんは、1920年(大正9)岩手県生れ、1938年(昭和13)岩手県立工業学校土木科を卒業。41年日立製作所入社。日立工場総務部営繕課に配属。
この海岸工場の地下防空壕については、1957年刊行の『昭和二十年六月十日—日立工場戦災記録—』(日立製作所日立工場発行)が取りあげている。なお同書の幹部座談会記録の一部は、こちら 史料 日立工場戦災をしのぶ座談会記録」 で。あわせて読まれたい。
たとえば防空壕での遺体発掘作業の終了時期について、『昭和二十年六月十日』はふれていないが、本書によると11月27日である。そして高度成長期の日立工場拡張工事によって、1959年と60年に5人の遺体、遺品が発見されたことが追記されている。
主濱さんには「大甕付近の防衛態勢(1)(2)」(『市民と博物館』第43・44号 1996年 日立市郷土博物館発行)がある。本書の執筆過程で判明したことを寄稿されたのであろう。
なお本書は一般に配付されていません。郷土博物館や記念図書館・多賀図書館で読むことができます。
内容細目
序 | |
第1編 防空法規と地下防空壕の工事について | |
1 防空態勢が整備強化された関連の諸法規 | |
2 営繕課の工場防空施設の施行体制 | |
3 防空施設に関し指導を受けた研究機関と工事に適用した図書 | |
4 営繕課の工事施工業者 | |
5 地下倉庫建築工事 | |
6 横穴式地下防空壕の工事概要 | |
第2編 爆撃と地下壕の発掘作業 | |
1 爆撃時の避難行 | |
2 地下壕の再掘救出対策 | |
3 救出対策の幹部会議 | |
4 日立鉱山の救援隊 | |
5 ハ号の竪坑による発掘 | |
6 B29の夜間飛行 | |
7 遺骨の一部を成沢墓地へ埋葬 | |
8 営繕課関係の被弾殉職者 | |
9 軍並びに防空関係官庁の被爆状況調査 | |
10 被弾図と工場幹部、殉職場所の図 | |
11 救出作業の苦難 | |
12 終戦後の地下防空壕の発掘作業 | |
第3編 艦砲射撃・焼夷弾攻撃・終戦 | |
1 艦砲射撃 | |
2 焼夷弾攻撃 | |
3 7月26日の爆撃 | |
4 終戦について | |
第4編 小名浜工場の建設工事について | |
1 小名浜工場新設の経緯 | |
2 工場建設の概要 | |
3 工場建設の業務体制 | |
4 工事の施工業者 | |
5 建設資材と輸送 | |
6 工場建設地の造成と土砂の輸送 | |
7 終戦前後について | |
8 木造工場建物の特性 | |
第5編 成沢霊園の工事について | |
第6編 機械部土水課と戦災復旧 | |
1 土水課の発足と業務内容 | |
2 土水課の戦災復旧作業 | |
3 土水課から機械部員更に営繕課へ変遷 | |
4 機械部の生産状況 | |
追録 | |
航空機用排気タービン過給機の発掘と展示について | |
調査に御協力いただいた方々 | |
調査した図書 | |
資料 | |
地下防空壕工事と戦災後の写真 | |
付録1 耐弾構造資料[陸軍築城部本部 昭和17年9月20日調製] | |
付録2 防空壕設計例(防空壕構築指導要領) | |
付録3 地下工場建設指導要領案 | |
付録4 横穴式防空壕の空襲被害に於ける戦訓[軍需省 昭和20年6月29日] | |
添付図 横穴式地下防空壕関係図(20葉) | |
添付図 小名浜工場関係図(12葉) | |
あとがき |