文献 海辺の点景


著者箕川恒男さんの「あとがきにかえて」からぬきだします。

 茨城県に属する太平洋の海岸線は、約一八五キロメートルにおよぶ。巨大港湾の築造、コンビナートや原子力施設立地など、あいつぐ開発の波に洗われて旧来のままの自然海岸は激減している。
 大洗岬から南、利根川河口までが、弓なりにくねった砂浜に荒波が寄せる「鹿島灘」であり、その北側、海岸段丘におおわれているのが福島県につながる「常磐海岸」である。川の上流にやみくもにダムがつくられて、海に流れ込む土砂の供給が薄くなる砂浜の貧弱化と、波に段丘(崖)をえぐられる浸食を受けて護岸補強などに忙しい危機的な側面も抱える。砂浜にヘッドランドを構築するなど修繕作業をほどこされてはいるが、痛ましい事態は解消されていない。

日立市域でも常磐線開通以来避暑地・海水浴場として漁業の町から転換してにぎわった河原子は、今やその砂浜が消え、対策工事で波間に顔をだすテトラポットも効果をあらわすことなく、荒々しい浪が防波堤に打ち寄せる。常陸那珂港ができてからこの有様だとの噂を聞いた。事実かどうかたしかめていないが。

内容細目

太字は日立市域関連記述

 口絵
  第一章 はこぶ …5
1 消える渡し船・波崎-銚子/2 飛砂の脅威・砂防林/3 北国・霞ケ浦のコイ /4 七つの海結ぶ・漁業無線局/5 磯出・金砂の神と水木浜6 輸入拠点・ベンツ
  第二章 あそぶ …31
1 熱気・カシマスタジアム/2 調教・大洗水族館/3 オオウメガザソウ・海浜公園/4 あこがれ・とちぎ海浜自然の家/5 健康の追求・とつぷさんて/体験航海・オーシャンクルー
  第三章 たべる …57
1 活況支える・鵜の岬/2 技術「講」・BMW農法/3 人気・漁師さんの浜料理/4 冬の旅・アンコウ
  第四章 つどう …75
1 球児と意地・海洋高野球部/2 危機・日本沿岸域学会/3 夜語りの会・「鰍」や/4 熱望・洋上投票/5 見えない国境・「入管」/漂着・「ごみ」にあえぐ/7 出前・「漁学」交流
  第五章 まもる …105
1 古代の匂い・祭頭祭/2 庶民の願い・十三参り/3 地の神・富士権現/4 滄桑の変・「鹿島開発」断章/5 航海のしるべ・灯台/6 年番と伝統・八朔祭/7 天然の良港・平潟/8 虫切り・有賀さん
  第六章 しらべる …139
1 タゴールと天心・五浦/2 寄港・南極観測船しらせ/3 耳石とアワビ・水産試験場/4 海藻探究・生物研究会/5 マリノセンシング・水産工学/6 宇宙天気予報・平磯環境センタ
  第七章 つくる …165
1 トッププラント・東電鹿島/2 国内第一号・温水養魚/3 巨大ベルコン・常陸那珂港/4 廃炉・原電東海発電所/5 生々流転・廃船の詩/6 共食いと個性・栽培漁業センター
  第八章 とる …191
1 浄める・濾過砂研究所/2 資源調査船・あさなぎ/3 埋もれた村・沢田遺跡/ 4 ルーツを求めて・烏帽子岩/5 共存共栄・鹿島灘ハマグリ/6 定置網を継ぐ・会瀬7 地産地消・ニュー3K
 
「あとがき」にかえて …221