史料 閉山時の櫛形炭礦概要
1972年

茨城県多賀郡十王町に所在する櫛形炭礦は、1973年1月31日閉山し、36年に及ぶ歴史を閉じた。そのおり作成された櫛形炭礦の概要を知りうる史料を紹介する。

史料目次 —— [櫛形炭鉱について]|沿革および操業変遷|1.操業状況|2.従業員等の状況|3.炭鉱の所要経費|4.鉱業施設等の状況|5.系列会社|6.児童生徒の就学通園状況|7.閉山理由|8.閉山日程


史料について

櫛形炭礦の閉山時に作成された資料が私の手元に5点ある(もちろんコピー)。そのうち(a)櫛形炭鉱の概要、(b)櫛形炭鉱の概要、(c)表題なし、の3点は櫛形炭鉱の概要を示すもので、(a)はタイプ印刷、(b)と(c)は手書きである。これら3点は若干記述を異にしながらも、ほぼ同一の内容をもつ。本項において照会するのはもっとも体裁・内容の整った、つまり公表用と考えられる(a)をベースに(b)のみにある記事を2ヶ所で補った。

[本文]

櫛形炭鉱の概要

[櫛形炭鉱について]

企 業 名  高萩炭礦株式会社
代 表 者  代表取締役 菊池 仁
資 本 金  5,100万円
設立年月日  昭和15年5月7日
本   社  東京都千代田区丸の内3丁目3の1
炭 鉱 名  櫛形炭鉱
鉱 業 所 長  夏原喜三郎
鉱 業 所  多賀郡十王町大字友部2,565                     

沿革および操業変遷

昭和12年6月 株式会社櫛形鉱業所により本坑(旧坑)を開さくする。
昭和17年8月 東邦炭鉱株式会社と合併する。
昭和20年5月 高萩炭礦株式会社が譲渡を受ける。
昭和35年11月 櫛形本坑(現新斜坑)の開さくに着手する。
昭和40年10月 運搬 通気 排水等の諸系統を旧本坑系より現本坑(新斜坑)系に切り換える。
昭和42年6月 高萩炭鉱閉山に伴い、同鉱の労務者を受入れ充員する。同時に予備切羽として第三斜坑区域の開発に着手する。
昭和44年3月 旧本坑区域を閉鎖し友部炭鉱事業廃止する。同時に第二斜坑を中心に操業区域を集約する。
昭和46年2月 第三斜坑を中心とする区域に主生産切羽を転換する。

1.操業状況

(1)石炭坑名  櫛形本坑

(2)鉱  区  茨城県採掘権登録第94号外6鉱区
          面積 86,715アール

(3)炭  層  炭層名  千代田本層
          山 丈  5.0〜6.0m
          炭 丈  5.0〜5.3m
          傾 斜  平均15°

(4)採炭方法  スライシング払および炭層払

(5)生産構造

区 分年 度44454647(見込)
生 産一般炭(トン)257,455248,627380,771395,400
人 員常用労務者(人)518521581524
能 率トン/人/月46.343.356.862.9

(6)産業荷渡   46年度実績

業種別数 量比率(%)業種別数 量比率(%)
電 力184,45353.5鉄 鋼6,3581.9
紙パルプ26,2337.6煉豆炭5030.2
化学工業6,9742.0その他製造業1000.1
食品酒造9600.3暖厨房119,02334.4
数量 344,604t   比率 100%

2 従業員等の状況 

(1)従業員数  47年11月末現在

職 種人員(人)備 考
職 員66(2)
鉱 員419(34)
常用臨時135(4)
請 負0(0)
620(40)

(注)( )内は長期欠勤者

(2)年齢構成  47年11月末現在

年齢区分人員(人)構成比率(%)備 考
20歳以下30.5
20〜30111.8
31〜4013621.9
41〜5031751.1
51〜6014423.2
60歳以上91.5
620100

(3)勤続年数

坑内員坑外員職 員
1年未満107人14人0人121人
1年以上〜5年未満144383185
5〜1037252789
10〜155117270
15〜204315765
20〜2527111351
25〜3017111442
30年以上---
42613166623
平均勤続年数8.7年10.6年14.1年

(4)労働者賃金     47年10月分

職 種出勤日数基準内賃金基準外賃金計(月収)
職員坑内22.671,58716,20587,792
坑外24.069,66213,95083,612
女子24.235,9005,39141,291
23.366,42213,97680,398
鉱員坑内21.663,92622,79986,725
坑外23.544,67026,49671,166
臨時21.581,65216,45998,111
22.164,56021,02785,587

史料(b)より

  職種別賃金実績     昭和47年10月分 操業日数26日

[職員については上記表に同じであるため略]

職 種出勤日数基準内基準外平均月収
礦員坑内採炭員21.□70,83329,11499,947
掘進員20.260,80815,56076,368
支柱員2152,97219,26072,232
内運員22.671,87815,85287,730
内機員23.873,21623,78096,996
内□員19.961,05818,49879,556
内雑員2550,23929,94480,183
21.663,92622,79986,725
坑外外運員23.249,72028,07877,798
外機員23.240,59446,21786,811
外□員2032,79320,46853,261
外雑員24.441,20331,20972,412
開□員22.750,6694,43055,099
外雑婦24.749,1236,46655,589
23.544,67026,49671,166
臨時坑内21.187,87516,721104,596
坑外男24.160,78521,41582,200
  女22.141,0232,25043,273
 計21.581,65216,45998,111
総 計22.164,56021,02785,587

(5)従業員および家族の居住地区別状況

十王町高萩市北茨城市その他
従業員数406人130人27人57人620人
世帯数3911282747593
家族数1,510人491人137人171人2,309人
扶養家族数 174人255人40人18人887人

3 炭鉱の所要経費 

46年度実績(千円)
賃金および賞与 578,341
資材費325,326
その他371,684
1,275,351

4 鉱業施設等の状況

(1)鉱業用地面積  390,500㎡

(2)炭鉱住宅

地区名構 造棟 数戸 数入居戸数空 家備 考
十王町友部原の坊木造平屋8831725463
鉄筋コンクリ
ート3階建
354495
9137130368

(3)水利用状況

 水 源給水源(㎥/日)備 考
飲料水等十王川2,262水利権申請中
井 戸576
鉱業用水十王川1,080
十王川3,918

5 系列会社

会社名 所在地 設立
年月日
業 種 資本金
(万円)
従業
員数
(株)高萩製作所 高萩市大和町 26.4 機械製作修理及び販売 1,200 69
日興建設(株)  〃 本町 24.9 土木建築 3,000 117
高萩開発(株)  〃 高戸 38.3 観光 10,000 63
(株)大心苑  〃 高萩 41.4 セミナーハウス・スポ
ーツランド
1,000 82
高萩商事(株)  〃 大和町 42.8 石油ガス石炭販売輸送
工事
1,000 86
医療法人
 高萩寛仁会
 〃 秋山 41.1 病院 1,014 28
(株)茨城炭礦会  〃 春日町 28.12 鉱山用火薬類 500 13
十王砕石鉱業(株) 十王町高原 39.7 砕石 2,000 50
(株)高萩エンジ
ニアリング
 〃 友部 45.7 測量設計・地質調査 100 7
515

6 児童生徒の就学通園状況

(1)小中高生の就学状況

地区別学校名在籍生徒数(人)うち従業員子
弟数(人)
備 考
十王町櫛形小学校781144
十王中学校552104
1,333248
高萩市秋山小学校61552
秋山中学校47348
1,088100
その他小中学校22北茨城市外
高等学校74十王53 高萩17 その他4
96
合 計444

(2)幼稚園    47年11月末現在

園 名園児数うち従業員子弟数備 考
櫛形幼稚園138人22

7 閉山理由

史料(b)より

  閉山の理由

  1. 従業員の老齢化による生産性の向上に限界がある。ことに直接員の雇用充足が今後益々困難となる。
  2. 相次ぐ炭礦の閉山による工場向け、暖房用炭共極度に需要の減退を来たし、増産による販路の拡大が難しく、当社の主力商品である塊炭の販売が先行き見通しが立たない。
  3. 現在の採掘ケ所は地上か山間部で鉱害の発生は極めて少なかったが、今後は平野部に入るので、公共施設、農工地に公害発生の虞がある。
  4. 賃金物価等の昂騰によるコストアップは逐年著しく上昇を及ぼし、又採掘ケ所の深部移行に伴ひ上記諸般の状況より増産による吸収は難しく、さらにコストアップを伴ひ経済的採掘に限界がある。
  5. 今後深部区域の於ける採掘ケ所の進展に伴い切羽の深度は700m以上に達し、必然的に盤圧の増加、切羽温度の上昇、異常出水の発生等も予測され、炭礦の操業に当って最も重要な保安の確保について危惧がある

8 閉山日程

昭和47年12月18日 石炭鉱業合理化事業団に石炭鉱山整理促進交付金申請
昭和48年1月31日 採炭作業終了
第1次解雇約400名
2月15日 撤収作業完了
2月20日 第2次解雇約200名
2月28日 坑口閉鎖
3月10日 鉱業権消滅登録