史料 茨城県の櫛形炭礦閉山対策
1973年
茨城県多賀郡十王町に所在する櫛形炭礦(高萩炭礦株式会社経営)は、1973年(昭和48)1月閉山する。茨城県最後の炭礦[註]であった。会社側による閉山発表は前年8月21日の労使協議会の席上でなされた。その後労使交渉が続けられ、12月17日両者は閉山に合意し、翌年1月31日に閉山と決まった(1972年12月20日付『いはらき』新聞)。
これに十王町は茨城県に対し(1)離職者の就職対策(2)町税の減収対策(3)児童減少による教育問題(4)中小の商工業者への資金対策(5)炭鉱跡地の利用計画(6)工業団地の造成(7)同炭鉱が運営する診療所・幼稚園・上水道の代替案など11項目の要望書を提出した(『十王町史 通史編』)。
従業員や家族、町民、町当局の不安に茨城県の対策を示したものが本史料であるともいえる。
- [註]茨城県の炭鉱の閉山状況は、こちら 茨城県内の炭礦閉山一覧 1956-73年 を参照
史料について
- ◦成立時期:1973年(昭和48)1月
- ◦作成者:茨城県石炭鉱業閉山対策本部
- ◦判型等:B5判 横書き 本文10頁 タイプ謄写版印刷
[表紙]
「
櫛形炭鉱閉山対策
昭和48年1月
茨城県石炭鉱業閉山対策本部
」
[改丁]
目次
1 炭鉱離職者対策
(1)再就職………………………… 1
(2)職業訓練……………………… 2
2 文教,民生,衛生等対策
(1)文教…………………………… 3
(2)福祉関係……………………… 5
(3)上水道………………………… 6s
(4)医療…………………………… 7
(5)住宅…………………………… 8
3 中小企業対策…………………… 9
4 産炭地域振興…………………… 10
[改丁]
1 炭鉱離職者対策
(1)再就職 職業安定課
影響 | 対策 |
1 炭鉱閉山時期
昭和48年1月31日 2 炭鉱在籍人員 (1)従業員数 47.11.30現在 [表:別記1] (2)従業員の年齢構成 47.11.30現在 [表:別記2] 3 人員整理計画 第1次解雇 48.1.31 約400名 第2次以降 48.1.15 約220名 〜28 |
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[別記1]
職別 | 男(人) | 女(人) | 計(人) |
職員 | 65 | 65 | |
坑内夫 | 424 | 424 | |
坑外夫 | 81 | 50 | 131 |
計 | 570 | 50 | 620 |
[別記2]
年齢段階 | 人員(人) | 構成比(%) |
30歳以下 | 14 | 2.3 |
31〜40歳 | 136 | 21.9 |
41〜50歳 | 317 | 51.1 |
50歳以上 | 153 | 24.7 |
計 | 620 | 100.0 |
(2)職業訓練 職業訓練課
影響 | 対策 |
櫛形炭鉱の閉山に伴い離職した従業員のうち,職業訓練の受講を安定所から指示される者が発生することが予想される。 | 訓練校における受入態勢 [表:別記3] |
[別記3]
訓練校名 | 訓練科名 | 訓練定員 | 訓練期間 | 入校時期 |
水戸 | 板金 | 10 | 1ヵ年 | 4月 |
溶接 | 10 | 〃 | 〃 | |
テレビ技術 | 10 | 〃 | 〃 | |
左官 | 10 | 〃 | 〃 | |
測量 | 10 | 〃 | 〃 | |
事務 | 20 | 〃 | 〃 | |
計 | 70 | |||
日立 | 板金 | 10 | 1ヵ年 | 4月 |
溶接 | 20 | 〃 | 〃 | |
ブロック建築 | 30 | 〃 | 〃 | |
塗装 | 20 | 〃 | 〃 | |
計 | 80 | |||
茨総訓 | 板金 | 20 | 1ヵ年 | 4月 |
溶接 | 20 | 〃 | 〃 | |
自動車整備 | 10 | 〃 | 〃 | |
機械製図 | 20 | 〃 | 〃 | |
計 | 50 | |||
合計 | 200 | |||
なお,上記以外に委託訓練の制度がある |
2 文教, 民生, 衛生, 住宅対策
(1)文教 教育庁
影響 | 対策 |
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転校希望者の便を図るため,個々のケースにそって, 関係機関に協力を要請する。 |
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(2)福祉関係 生活福祉部
影響 | 対策 |
1 生活保護世帯
4世帯 6人 | |
2 低所得世帯
59世帯 |
低所得世帯のうち母子世帯1世帯3名ついては住宅等について援助を要する見込 |
3 身障者世帯
18世帯 25人 |
現在就労中であるが閉山後の再就職については問題があるものもでるものと思われる。また家族に重度者が2名である。 |
4 精薄者者世帯
1世帯 4人 家族に重度者1名 |
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5 長期療養者世帯
5世帯 16人 うち内部症で2世帯2人が入院 |
医療費については現制度でやれる見込 |
6 殉職者遺族数
6世帯 19人 |
現状で生活に問題ない見込である。 |
7 就学援助費
受給世帯 7世帯 16人 |
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8 世帯更生資金活用見込み 対象者 なし |
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9 幼 稚 園 | 139名の園児の処置については,町当局,会社等と話し合い,保育所または幼稚園の設置等について検討する。 |
(3)上水道 環境衛生課
影響 | 対策 |
閉山に伴う専用水道施設の維持管理機能が失なわれると公衆衛生上の問題が生ずる。 | 周辺地区を含めた町営の水道事業とした水道計画を検討する必要がある。 |
(4)医療 医療薬務課
影響 | 対策 |
会社経営の診療所が廃止される場合は,現在治療を受けている外来患者の処置対策を早急に講じなければならない。 |
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(5)住宅
従業員の地元定着をはかるため炭鉱において社有地を開発し第1次37戸(2月末完成予定),第2次として80戸を建設予定であり,同計画が円滑に実施できるよう指導する。
3 中小企業対策
中小企業課
影響 | 対策 |
同炭鉱閉山に伴い同坑従業員を顧客対象とした地元商工業者は
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常磐炭礦(株)茨城礦業所の閉山対策で措置したものと同様に今回も特別融資を創設する。
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[別記4]
区分 | 限度 | 種類 | 期間 |
転業・移転資金 | 500万円 | 設備 運転 |
5年
3年 |
緊急つなぎ資金 | 100万円 | 運転 | 3年 |
4 産炭地域振興
商工企画課・企画調整課
影響 | 対策 |
炭鉱閉山による地域の疲弊 |
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十王町における櫛形炭鉱の占める経済的社会的役割は大きく閉山によつて各分野における落ち込みが懸念される。 | 経済的な疲弊を回復し,住民の所得向上と自治体などによる公共サービスの向上を期するため,工業団地を造成し,地元住民の福祉につながる企業を積極的に誘導すること。
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