企業城下町日立の「リストラ」目次
- 編 者 茨城大学地域総合研究所
- 発行所 東信堂
- 発行年月日 1993年3月20日
- A5判 245頁
企業城下町というジャーナリスティックなタイトルの学術書である。主として1980年代の状況を分析しているが、いくつか歴史的分析が行われている章もあるので紹介することとした。第2章の日立市の都市形成及び都市計画をテーマにした論考はこれまでになかったもので、貴重な仕事といえる。執筆者は茨城大学地域総合研究所員と常陽産業開発センター員及び日立市教育委員会職員で構成される。
帯の文章をそのままに紹介する。
企業による「地域画一化」から市民主体の「多様化・多元化」へ—生活環境の改善を軽視し、コミュニティの活力を弱めた「高度成長」イデオロギーからの転換を求め、典型的企業城下町日立の詳細な分析を通じ、企業・行政・市民の新たな連携を主導する「自立した市民」の可能性を探る。
はしがき | |
序 「転換期」の地域社会と企業城下町日立 | … 帯刀 治 |
1 転換期の地域社会 | |
(1)「リストラ」の時代(2)「転換期」の企業城下町(3)近代鉱工業発祥の地・日立 | |
2 地域社会研究の地平と基本的視座 | |
(1)企業と地域社会研究の地平(2)「企業城下町」への関心(3)地域社会の未来展望 (4)本書の課題と構成 |
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I 日立市の歴史的形成 | … 雨宮昭一 |
1 日立市の形成過程 | |
2 戦後における労働者社会の自立と解体 | |
3 平準化・同質化と二つの道 | |
II 企業城下町日立の都市形成 | … 斎藤義則 |
1 工場を核とした住区集積による市街地形成 | |
(1)工場立地以前の市街地基盤(2)都市基盤としての四つの住区(3)住区の拡散的広域 化と現代の都市居住 |
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2 住工混合の土地利用と中心市街地 | |
(1)住工混合の土地利用と分布(2)中心市街地における機能配置 | |
3 既存の住区構成を継承した都市計画と分散型都市構造 | |
(1)中心市街地の基盤改善の意図をもたない戦前の都市計画(2)住区構成を継承した戦 災復興期の都市計画(3)分散型都市構造を前提とした現行都市計画 |
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4 転換期の都市計画と住区集積の現代的意義 | |
(1)転換期にある日立の都市計画(2)日立の個性としての住区集積(3)求められるシ ナリオの策定 |
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III 日立市の産業構造特性 | … 松本治郎 |
1 地域産業構造の特性 | |
(1)第2次産業が主役の生産構造(2)第2次産業からが他から第2次・3次産業型へ移行 する就業構造(3)新規学卒、一般労働市場(4)工業依存から複合構造へ |
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2 産業構造の変動要因と環境変化 | |
3 工業構造の特徴 | |
(1)業種特性(2)企業の階層構造(3)親企業の推移と中小金属・機械工業の動向 | |
4 下請構造の特徴 | |
(1)協調拡大期—専属強化(2)下請再編成期—選別強化(3)受注多元化・相対的自 立化への途 |
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5 地域産業構造の調整・転換の方向 | |
(1)電気・機械産業の発展方向と課題(2)親企業・日立製作所の国内・海外戦略 (3)国際化の進展と外国人労働者(4)下請企業の転換への対応(5)多様な産業構造に 向けて |
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IV 日立地域の企業行動と自治体行財政 | … 帯刀治・松本治郎 |
1 企業城下町の構造特性 | |
2 企業行動の変化 | |
(1)「柵内主義」から持ち家制へ
(2)環境問題、消費者運動に対応する地域対策 (3)地域対策から地域社会貢献へ |
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3 自治体行政の対応 | |
(1)高度成長期の企業拡張への対応(2)石油危機後の市行政(3)産業構造転換期の市 行政 |
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4 日立市の財政構造 | |
(1)日立市の財政力の変動(2)日立市の歳入構造(3)日立市の歳入構造(4)自律的 な財政基盤の確立に向けて |
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V 日立市「団塊市民層」の生活構造 | … 長谷川幸介 |
1 高度成長期に流入した市民層の生活様式 | |
(1)農村から都市へ、そして社宅から団地へ(2)企業従業員・労働者・市民 | |
2 家庭生活の特徴と老後への不安 | |
(1)家族生活の特徴(2)老後への不安と新しいライフスタイル | |
3「団塊市民層」の生活課題と行政の課題 | |
(1)「団塊市民層」の地域生活課題の背景(2)「団塊市民層」2世の流出と生活課題 (3)行政課題とコミュニティの対応 |
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4 都市的共同性の模索 | |
VI 日立の市民意識構造 | … 赤津一徳 |
1 企業社会の進展 | |
2 企業社会と市民意識 | |
(1)職種が左右する生活時間(2)給与所得者層の不満 | |
3 市民意識の構造特性 | |
(1)逆転した意識のピラミッド(2)市民意識をおおう無力感(3)”まち”のリストラ | |
4 意識変化への対応 | |
5 生活者優先社会への中心点的課題 | |
VII 日立市の地域福祉と福祉ボランティア | … 松村直道 |
1 ボランティア活動をどう捉えるか | |
(1)ボランティア活動への現代的関心(2)ボランティアの社会的性格(3)ボランティ ア活動の発達モデル |
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2 共感志向型活動の成熟から離脱へ | |
3 福祉施策の機能分化に対応したサービス志向型活動の展開 | |
4 参加志向型期のボランティア集団とメンバーの社会的性格 | |
5 共生志向型のボランティア活動をめざして | |
VIII 日立市の生涯学習とまちづくり | … 伊藤智毅 |
1 生涯学習推進計画づくりの経過 | |
2 推進体制の整備 | |
(1)有言実行型の推進リーダーで積極型官民一体の推進本部(2)昨日までの受講生が市 民教授で講師に(3)情報提供はパソコン通信で |
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3 生涯学習モデル事業の特徴 | |
(1)学校教育モデル(2)モデル企業における事業(3)公民館事業との連携と新しい学 習システム化の実験 |
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4 「百年塾」は運動はまちを変えるか | |
IX 企業城下町「日立市」のリストラ | … 帯刀 治 |
(1)企業城下町・工業都市形成の過程(2)産業構造転換と地域再編(3)市民生活・意 識構造の変容と再編(4)市民活動の可能性と課題(5)日立における「リストラ」の行方 |