アメリカ軍日立地区攻撃報告書 目次
『日立戦災史』収載

1945年(昭和20)6月10日、7月17日、7月19日、7月26日に日立地域はアメリカ軍の攻撃にさらされた。その攻撃についてのアメリカ軍の3種の記録と報告を戦災と生活を記録する市民の会が『日立戦災史』に訳出している。「一 日立地区艦砲射撃調査班報告」「二 日立市街地域焼夷弾攻撃報告書」「三 日立製作所海岸工場爆撃報告」の三つである。 それらの目次を以下に紹介する。攻撃を受けた側、日本及び日立市・多賀町の被害調査がこれほどまでになされていない中で(空襲、戦後の混乱の中であたりまえと言えばあたりまえだが)、貴重かつ重要な記録である。

史料内容細目


    一 日立地区艦砲射撃調査班報告

  1.  史料について
     艦砲射撃を中心とした他の攻撃の被害についての実地調査報告。
     米国戦略爆撃調査団の艦砲射撃調査班は、1945年10月19日から26日までの間の七日間、日立地域において調査を行った。調査班は各企業、日立市に資料の提出を求め、市民からは聞き取りを行った。その報告はまとめられ、翌1946年春に他の報告とともに刊行された。
     日立製鋼所(日立製作所水戸工場)、日立兵器(日立兵器株式会社水戸工場)は訳を略しているが、『勝田市史編さん史料6 勝田艦砲射撃の記録』に訳出されている。
     この調査は7月17日の艦砲射撃の損害調査が主たる目的であったが、6月10日・7月19日・7月26日についてもあわせて調査しており、全体をとらえる上で重要な報告である。
     損害状況について、建物・工作機械の被害には詳細な記録がなされているが、人的被害について第1部要約の末尾と第13部の末尾に同文で「6月10日の爆撃で700人が殺され、73人が負傷し、210人が生死不明となったと報告された。艦砲射撃と焼夷弾の総合結果として、約490人が殺され、300人が負傷した」と記録したのみである。
  2. 第一部 要約

  3.  1945年7月17日深夜から18日未明にかけて米軍戦艦5隻、軽巡洋艦2隻が日立地区を砲撃した。その砲撃内容と損害状況を載せる。
  4. 第二部 砲撃記事

  5.  目標工場名(日製山手工場・日鉱製錬所・日製電線工場・多賀工場・日立兵器・日立製鋼所・磯崎電波兵器設備)と砲撃艦名・砲弾の種類・砲弾数が表にして示す。
  6. 第三部 日立製作所 多賀工場

  7. 第一節 目標の説明  (a)機能面の説明 (b)物理面の説明
  8.  (a)において、多賀工場の生産の推移を詳細に解説し、労働力について常勤の男性労働者の減少を補ったのは女性と学徒だったことを指摘する。(b)の物理面の説明では工場の配置について分析する。
  9. 第二節 損害状況の分析  (a)物的損害 (b)機能的損害
  10.  (a)では多賀工場の六つの建造物について、その機能と構造、砲弾命中数、損害程度が詳細に記される。「機能的損害」では、1発の砲弾の命中だけでも生産阻止、操業停止に追い込むことができること、多賀工場は設備の疎開を進めており、30%にまで生産能力は低下していたが、砲撃によって15%まで減少したことが記される。損害概要表が附属し、70の建物ごとに損害が詳細に記録する。
  11. 付録1 製品の名称、種類および取引[表]
  12.  電気起重機ほか11製品の半数が軍工廠および陸海軍に納入されていることを指摘する。
  13. 付録2 主な製品およびその他の製品の生産高と生産価額[表]
  14.  主な製品として起重機・溶接機・発電機・点火プラグ・始動モーターと発電機の5種、及びその他の1939〜45年9月の数値をあげる。
  15. 付録3 主な原材料の受入高[表]
  16.  圧延鋼・銑鉄・銅・石炭について1939年〜45年9月の生産数値を示す。
  17. 付録4 主な原材料の在庫高[表]
  18. 付録5 下請業者の名称、所在地、機能[表]
  19.  1945年7月19日以前の日立市内8、水戸市内3、多賀町2、石岡町2、勝田町・下館町・太田町各1社の名称と下請作業内容を記す。
  20. 付録6 雇傭水準[表]
  21.  1940〜45年の四半期毎に常傭労働者・臨時労働者数を男女別に記載する。
  22. 付録7 工作機械[表]
  23. 第四部 日立製作所日立工場 海岸工場

  24.  海岸工場は、艦砲射撃の目標ではなかったが、6月10日の高性能爆弾(1トン爆弾)攻撃の被害と7月19日の焼夷弾攻撃の被害調査を行った。
  25. 第一節 目標の説明  (a)機能面の説明 (b)物理面の説明
  26.  (a)は日立工場を構成する海岸・山手・山崎・下野宮・高萩工場の生産状況について分析し、「物理面の説明」は海岸工場の建物の配置・構造を述べる。
  27. 第二節 損害状況の分析  (a)物的損害 (b)機能的損害
  28.  (a)について、報告書は次のように述べる。
     機械の損害の評価はもっぱら日本側から提出された資料に基づいており、それに応じて評価されなければならなかった。ほとんどの機械類及び設備は攻撃以来疎開されており、日本側の報告の立証は不可能だった。
  29.  多賀工場同様に海岸工場についても「損害概要」表を載せ、6月10日の1トン爆弾攻撃と7月19日の焼夷弾攻撃をあわせた損害を155の建物毎に記録する。
  30. 付録1 日立製作所各工場の名称と所在地
  31. 付録2 主な株主の名称と持株
  32. 付録3 日立製作所日立工場の各工場の名称、所在地、資産
  33. 付録4 製品の種類と取引
  34. 付録5 工場および製品別生産価額
  35. 付録6 日立工場の下請業者の名称、所在地、機能
  36. 付録7 日立工場の原材料の受入高
  37. 付録8 日立工場の原材料の入手先
  38. 付録9 日立工場の原材料の在庫高
  39. 付録10 日立工場の雇傭水準
  40. 付録11 海岸工場における1945年6月10日のB-29攻撃による工作機械の損害
  41. 付録12 日立市街地域への1945年7月19日の焼夷弾攻撃による日立工場の経済的損失
  42. 付録13 日立市街地域への1945年7月19日の焼夷弾攻撃による電線工場の工作機械の損害
  43. 付録14 日立市街地域への1945年7月19日の焼夷弾攻撃による山崎工場の工作機械の損害
  44. 第五部 日立製作所日立工場 芝内工場(山手工場)

  45. 第一節 目標の説明  (a)機能面の説明 (b)物理面の説明
  46. 第二節 損害状況の分析  (a)物的損害 (b)機能的損害
  47.  7月17日の艦載機、7月17日〜18日の艦砲、7月19日の焼夷弾、7月26日の大型破砕爆弾の4回の攻撃についての被害調査記録。損害概要表を載せる。
  48. 第六部 日立製作所日立工場 電線工場

  49. 第一節 目標の説明  (a)機能面の説明 (b)物理面の説明
  50. 第二節 損害状況の分析  (a)物的損害 (b)機能的損害
  51.  7月17日から18日の艦砲射撃では(a)で
     弾頭に信管のついた一六インチ砲弾一二六発が当工場に浴びせられた。しかし、どの砲弾も工場の境界線内で炸裂しなかったことが調査の結果判明した。
    と説明し、焼夷弾攻撃の被害について損害概要表を載せる。(b)では
     艦砲射撃の工場生産に対する最大の影響は、明らかに従業員の欠勤の増大とこの攻撃に続く仕事の能率の低下であった
    と報告する。
  52. 第七部 日立製作所日立工場 高萩工場

  53.  高萩工場は「米国の艦船の攻撃目標ではなかったが、かなり多数の直径の長い砲弾の落下地点が近くで発見されており[中略]英国の戦艦キング・ジョージ五世号の艦砲射撃の目標になっていたのかもしれない」と調査班は述べる。
  54. 第一節 目標の説明  (a)機能面の説明 (b)物理面の説明
  55. 第二節 損害状況の分析  (a)物的損害 (b)機能的損害
  56. 第八部 日立製鋼所(日立製作所水戸工場)

  57. 〈略〉
  58. 第九部 日立兵器(日立兵器株式会社水戸工場)

  59. 〈略〉
  60. 第一〇部 日立銅精錬所(日本鉱業日立鉱山電錬課)

  61. 第一節 目標の説明  (a)機能面の説明 (b)物理面の説明
  62.  日立鉱山の銅の生産状況と1944年以降の生産減の要因および工場・設備について述べる。
  63. 第二節 損害状況の分析  (a)物的損害 (b)機能的損害
  64.  7月17日朝の艦載機による攻撃、同日夜の艦砲射撃、19日の焼夷弾攻撃による「物的損害」について述べる。「機能的損害」では、それら3度の攻撃の中で生産の減少にもっとも寄与した攻撃を探る。そして結論は「艦砲射撃の結果生じた欠勤の増大と労働生産性の減少は、焼夷弾攻撃の影響からの回復を遅らせたという点で、深刻なものであった」と分析する。
  65. 付録1 原材料の受入高と受入先
  66. 付録2 生産高
  67. 付録3 雇傭水準
  68. 付録4 製錬および精錬装置の性能
  69. 第一一部 電波兵器設備 磯崎

  70. 〈略〉
  71. 第一二部 日立市街地域

    第一三部 輸送ならびに通信設備、公共施設、士気、社会生活および衛生面への艦砲射撃の影響

  72.  市民の士気にたいする三種類の攻撃の比較的な影響について質問したとき、高性能爆弾攻撃と焼夷弾攻撃のいずれよりも艦砲射撃の方が恐ろしいと、各個人が一斉に答えた。二つの空襲とは違って、艦砲射撃の場合は警報がなく、全市民が完全な恐怖につつまれた。攻撃地域からは大砲の砲口の閃光が見えず、次の一斉射撃の開始も予測できなかった。そして作戦がいつ終るかも判断することができなかった。[中略]ある市民は、いつ何時死ぬかわからないと思い、もし、死ぬことになれば、少なくとも一家揃って死ぬ決心をしながら、いかにして一枚の毛布の下で身体を寄せ合ったかを話してくれた。三ヶ月後になっても、この市民は艦砲射撃のことを思っただけでも、今なお身の毛のよだつ思いだと言っていた。
  73. 付録1 関東配電会社の主な設備の能力と各攻撃によって被った損害[表]
  74.  日立火力発電所・日立第三変電所・助川変電所・送電線・配電線・家庭用装置・関東配電日立営業所の被害について、3攻撃に分けて記録する。
  75. 二 日立市街地域焼夷弾攻撃報告書

  76.  史料について
    1945年7月19日深夜から20日未明にかけての米軍の焼夷弾攻撃に関する飛行作戦の計画と実施に関する「戦術特令報告」である。この飛行作戦の目標地は、福井市(福井県)・日立市・銚子市(千葉県)・岡崎市(愛知県)の「市街工業地域」と尼崎市にあった日本製油所(日本石油関西製油所)であった。日立地域に関する部分を抜粋して訳出している。
  77. 戦術特令報告

  78. 内容一覧表
  79. 戦術上の説明
  80. 一 報告の確認  a 攻撃目標 b 航空軍の攻撃
  81.  bにおいて日立地区の攻撃に加わった飛行団名とその編成を記す。
  82. 二 特令計画  a 目標の選定 b 目標の重要性 c 時間的要因 d 弾薬と燃料の注入 e 飛行計画 f 爆弾投下の要因 g 防衛戦術 h 空・海の救援
  83.  bは、日立地区の性格を捉えた上で「日立への爆撃が成功すれば、日本の工業は破壊され、また日本の回復能力も低下するであろう」と述べる。cでは、攻撃時刻は、爆撃隊の着陸が昼間の時間となるよう逆算して設定されたこをが明かす。dには、日立地域を襲った第73飛行団のB29爆撃機が搭載した焼夷弾の種類を記す。「目標地域内に住居と産業構造物がいりまじっている状態には、多くの命中弾によるおびただしい出火部署と、適当な貫徹力が必要」として投下焼夷弾の種類が選ばれたことを明かす。
  84. 三 特令の実施  a 離陸 b 航空経路 c 攻撃目標 d 帰還 e 着陸 f 航空機の損害と損傷 g 作戦の実施と計画 h 日立[破壊状況]
  85.  aには、日立に向った第73飛行団の爆撃機の数を記す。cには、福井以下5都市の攻撃に参加した爆撃機総数と爆撃時間、投下爆弾総量を明示する。hは簡略に述べるにとどまり、詳細は添付資料Dの「第三部 損害状況の査定」に示している。
  86. 添付資料A 作戦
  87.  第一部 航空報告と航跡地図
  88.  第二部 爆撃照準地点〈略〉
  89.  第三部 レーダー接近地図〈略〉
  90.  第四部 爆撃
  91.  第五郎 飛行技術報告と地図
  92.  第六部 レーダー〈略〉
  93.  第七部 射撃法〈略〉
  94.  第八部 空・海救助地図〈略〉
  95. 添付資料B 天候
  96.  第一部 天候の概要
  97.  第二部 図表—天気予報と観測上の天候〈略〉
  98.  第三部 天気予報図〈略〉
  99.  第四部 天気概観図〈略〉
  100. 添付資料C 通信(略)
  101.  第一部 レーダー防御装置
  102.  第二部 ラジオ
  103. 添付資料D 情報
  104.  第一部 敵側航空機の抵抗
  105.  第二部 敵側高射砲
  106.  第三部 損害状況の査定
  107.  日立地域の「建物密集地域(市街地域)」1.1平方マイル[約2.8平方キロメートル]の77.2%、0.85平方マイルを破壊し、「建物密集地域(工業地域)」0.28平方マイルの10.7%を破壊し、両地域合計1.38平方マイルの64.5%を破壊したと述べる。
  108. 三 日立製作所海岸工場爆撃報告

  109.  史料について
    1945年6月10日爆撃後の7月6日に米軍は空撮を行い、その写真をもとに被害状況を査定した。提出日1945年7月11日付けの報告書である。
  110. 爆撃目標に関する情報

  111. 一 爆撃目標の位置と目標の確認
  112. 二 爆撃目標の説明
  113. 三 目標の重要性
  114.  海岸工場は、その附近にある三つの日立工場の中では最大ものであり、あらゆる種類の重電気機械、水力タービン、昇降機、コンベアー、電気機関車、ジーゼルエンジン及びボイラーを生産していると報告されている。地上報告の示すところでは、戦前の発電機と発動機の生産高は、この種の機械の日本の総生産のそれぞれ31%と40%にも及んだ。
  115. 損害状況査定報告

  116. 要約
  117. 損害状況の統計上の要約
  118. 損害項目[表]
  119.  日立工場143棟の内損害のあった119棟について、一棟ごとの屋根面積・損害面積・内部破壊面積・建物の機能説明などを示す。